この週末、二日にわたり「七夕古書大入札会」が開催されている。すでに53回と数えるこの行事は、古本屋さんしか入札の権利がないが、普通に関心をもつ人々にも公開され、これまで数回覗いたことがある。さいわい好天に恵まれ、今度も出かけてきた。
出発の直前になって、妙なメールが飛び込んできた。「双六ねっと」を頼りに、まったく面識のない愛好者がニューヨークから連絡を寄越し、個人所蔵の双六の写真を添付してきた。感心して入札会の目録を眺めてみれば、今年はじつは11点も出品されている。さほど注目を集めているようには見えず、一人しずかにそれを眺めることができた。自由闊達でいて、情報が豊富に詰まっているこの貴重なジャンルは、やはり魅力に満ち溢れている。表現の様式という視線で観察していても、さまざまなバリエーションがそこに開示されている。「賑式亭繁栄勝双六」は文字情報がいちばん多い。それぞれの枡に薬の名前が掲げられ、効用の説明から値段まで充実な宣伝文句が添えられる。その枡から振り出される賽の数字への指示も丁寧に記入されている。これに対して、「大日本六十余州一覧双六」は、地名とその地の有名人や風景に加えて数字の指示が見られ、「東海道五拾三駅大双陸」はつぎの枡の地名とそれまでの距離だけ掲げ、数字の指示はない。「新板七津伊呂波清書双六」となれば、舞台上のポーズに順番が振られているのみで、枡のタイトルさえ提示されていない。ただし、じっくり眺めてみれば、どれも遊びの道具として明らかに機能し、おそらくその時その場のローカルルールが案出されるのではないかと思わせるものだった。
入札会の魅力は、どの出品も自由に触れられるとのことである。今年も、「大江山絵巻」(三巻)と「二十四孝」(二巻)をゆっくり披いた。素晴らしい思い出になった。
七夕古書大入札会
2018年7月7日土曜日
古書入札会
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