2008年2月4日月曜日

鼠の婚礼

陰暦では、今月七日になってようやく子の年に入る。中国はじめ、ベトナム、韓国など多くの東アジアの国々はいまなおこれを守り、春節を一年の中での一番の祝日としている。

子は鼠である。したがっていまの中国では鼠の話がさかんにメディアを賑わせる。その中で繰り返された語彙の一つは、「鼠咬天開」、鼠が噛んで天地が開く、とでも訳すべきだろうか。きっと鼠の小さな歯をもっての壮絶な破壊力から着想を得たに違いないが、天地開闢まで鼠のそうした力によるものだとされるとは。人間に被害をもたらすといった鼠の生態は、遠く『詩経』においてすでに詠われていたぐらいだから、人間との付き合いの永いこと、そして人間からの敬畏の目で見られてきたことが思い浮かべられる。

一方では、中国のお正月には「年画」と呼ばれる素朴な絵の飾りを付ける慣習がある。そのような晴れ晴れとして目出度い表現媒体にも鼠が登場した。そのテーマの一つには、鼠の婚礼がある。御伽草子『鼠の草子』などを読みなれたわれわれには、まさに興味が尽きない。たとえば、今度の写真は、最近の新聞に紹介された「綿竹年画」(李方福作)の一例である。人間の格好をして行列を成して町を練り歩き、花嫁を行列の中心に囲んで、ラッパや旗などをもって人々の注目を集め、沿道の祝福を集めるといった内容は、御伽草子のそれを強く想起させてくれる。とりわけ日傘や扇子、安逸に日本的なアイテムとしてしまいがちな小物まで描かれている。一方では、御伽草子では思いもよらない着想もあった。その極致なものは、画面の一角で大きく構えた鼠の天敵の猫である。行列のメンバーを容赦なく爪に掴り、口に銜える。その様子にまで平然と視線を向けた鼠の姿は、あくまでも絵の愛嬌か。画面の上方の鼠取りに捉われた鼠も同じ悪運を辿っている。中国の民間伝説では、結婚の行列は、鼠たちに自分の家からどこか別のところに引越しをして出て行ってもらいたいという期待が託されたものだとする。猫の出現はまさにそのような希望と一致するものに違いない。

先月、カナダでは鼠の切手が発行された。そしてそのテーマはまさに鼠の婚礼であり、新郎新婦と思われる二匹の鼠は、なんと日傘と扇子をそれぞれ手にしている。いつの間にか鼠の婚礼が世界的なテーマとなって東西を走り回るようになった。

年画《老鼠娶親》里的民俗(沈泓)
東方網:世界に発行された鼠年の切手
Canada Post: The Rat Wraps up Canada Post's Lunar Stamp Series

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