2008年2月10日日曜日

双六の平安と江戸

「すごろく」という言葉は、とても不思議だ。時代によって、それの指す内容がまったく違う。歴史の中で理解がこうも中身が違うものかと、言葉というよりも人々の常識の変容を表す一つの極端な例である。

平安や鎌倉時代の絵巻の中に登場した双六とは、中国から伝来された木盤のゲームである。かつては、中国でも日本でも人々が異常なほどにこれに夢中し、国家の政府が特別な法律を決めてこれを禁じたこともしばしばあったぐらいだった。絵巻の中で見られる有名なのものは、『長谷雄草紙』に描かれた長谷雄と鬼との間の一局だった。鬼に競い勝った長谷雄は、ご褒美に絶世の美女をもらったのだから、話はおもしろかった。これより古い絵巻では、『鳥獣戯画』、『病草子』など平安時代のもの、そしてこれより新しい作品では、『石山寺縁起』などに、双六の盤あるいは双六に夢中する人々の姿がさまざまな状況のもとで描かれた。

一方では、江戸時代になると、双六(現代の言葉では、誤解を避けるために「紙双六」とも)というものが大いに流行った。ひとつのゲームとしての形態も、道具の形も材料も、競技の方法もまったく異なるものである。そもそも江戸や明治時代から現代にかけて多くの人々を魅了した「双六」とは、はたして平安時代に中国から伝わったあの双六とはどのような関連をもっていたのやら、どのような経緯を通じて共通の名前を持つようになり、当時の人々の如何なる意識を反映したのやら、これらの基本的な質問には、いまなお推測もってしか答えることができない。

考えようによれば、紙双六は、ひとつのゲームよりも、ユニークな表現形態である。これに興味をお持ちの方、私の友人が主催している「双六ねっと」をぜひお訪ねください。

双六ねっと

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