前回に引き続き花押のことを考えてみたい。今度は英語圏に目を向けてみる。そこにも文字と絵との交差というものはもちろん存在している。漢字は花押なら、ローマ字はモノグラム(monogram)だ。
北米で生活していると、日常の中で日本のと違う作法あるいはスタイルをあげるとすれば、そのトップに個人の署名が上げられるだろう。印鑑というものはほぼ存在せず、その代わり署名というのは、仕事の場に限らず、クレジットカードでの買い物などでも頻繁に要求される。最近になって、署名用電子パットを用いるような業種まで多く見られるようになった。自分の署名の書き方を思い巡らし、あれこれと試して見るという経験はいまでも記憶に新しく、成人に向かう若者たちの模索をじかに見つめたことも一度や二度ではない。
しかしながら、そのような署名の文化において、モノグラム はだいぶ異なる役目を果たしている。あえて言えば、漢字圏で署名そのもののために発達してきた花押と違って、モノグラムは、おなじく文字を用いて絵的な構図を作り上げていても、実際の役目は、むしろロゴの一種だ。頭文字などを視覚的な効果を狙って丁寧に組み合わせ、洗練された構図に仕上げるる。一方では、それは集団や個人のシンボルになっていても、実際に関わったことの証明としての署名にはさほど使われていない。実際に生活の中で見かけるのは、バッグなどの商品のデザイン、野球球団のロゴなどがすぐに思い起こされるものぐらいだ。
ちなみに日本での生活風景の中ですぐに思いつくのは、JRということではなかろうか。英語圏の文化で言えば、それは「リガチュア(Ligature、合字)」と言い、さらに違うカテゴリーに分類されるものだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿