2010年5月8日土曜日

画巻ふたたび

上海で開催されている世界博覧会は、最初の一週間を無事に過ごした。いまだ実際に訪ねた人がごく少数派だが、宣伝の役目を担うメディア関係が賑やかな会場、それにそれを取り囲む上海の現在にスポットライトを当て、多くの人々のために訪ねてみる理由を見つけ出してくれたようだ。

博覧会の中国館も豊富な話題を提供している。中でも少なからぬ驚きを感じさせてくれたのは、展示の目玉にこんどもまた画巻を選んだことだ。二年前のオリンピックに続くもので、関係者の説明では、実際に発掘され、保存されている景観があまりにも少ないこともあって、代わりに画巻の魅力を再認識したとか。興味深いのはその表現の方法だ。今度も途方もない大きなサイズに引き伸ばしたものに仕立て、しかも現代映画の手法よろしくと、描かれている人物を全員動かせたという、発案者が得意に思うだろうが、いかにも唐突で新味が乏しいと評価せざるをえない工夫を披露してくれた。

時を同じくして、去年の夏に提出した原稿が活字になって手元に送られてきた。唐の画家李公麟とかれの代表作「孝経図」を取り上げた。画面内容の解明を試みながら、画家にかぎらない中国文人の発想と価値観を覗いてみたものだった。ご批判をお願いしたい。

『漢文文化圏の説話世界』

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