2010年5月23日日曜日

慶応・中古文学会

短い東京滞在の間に、学術活動に参加することができた。昨日のそれは、慶応大学で開催される中古文学会への聴講だった。しかも同学会としては非常にめずらしく近世初期のものにスポットライトを当て、絵本絵巻の研究が初日のシンポジウムのテーマになった。じつに運がよかったと言わざるを得ない。

午後の時間をいっぱいに使った講演や討議からは、多くのことを習った。その中の一つは、在来の研究が示すデジタル環境への寄与と、それへの参加である。パネル発表者はまさにいくつかの典型的な立場を示した。主催校の慶応大学は新たなプロジェクトを立ち上げ、すでに公開したもの以上のアプローチを目指す。対してデジタルライブラリーの内容を大きく充実し、新たなタイトルをいくつも加えた国学院大学は、資料の公開と研究の発表を一セットのものとして捉えて、意図的にそれを行う。一方では、オリジナルものの公開に関連しない研究者は、すでに公開された資料全体を相手にし、そこから証拠を見出し、論を展開する。伝統的な出版物ではない電子の資料を論拠とし、俎上に載せるということは、どれだけ研究の環境が変化したものかと物語った。

いつものことながら、学会はまた友人、知人と再会する場でもあった。この学会のためにほぼ日常活動的な感覚で集まったきた学者や大勢の若い学生たちを目にして、日本での研究と交流のありかたをあらためて認識した。カナダなどでは、研究費などの制限もあって、実質年に一回か二回しか集まりに出られない実情を再び思い出すされる。

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