2012年3月17日土曜日

AASの会場から

学会参加のため、京都から飛行機を乗り継ぎ、トロントにやってきた。「AAS」という略称で、自分にとっては北米での研究生活の一つの出発点であり、かつて足頻に通い、さまざまな思い出を作った。ただここ数年、日程調整など現実的な理由もあって、なかなか参加できない。そのため、これも研究休暇の中での一つの特権になった。

いつもながら会場となる豪華なホテルの中を歩き回り、見定めを決めたパネルには途中でも平気に入り、つぎの話に間に合うようにさっと抜け出したりして、緊迫していて充実な時間は格別だ。発表者たちはみな正装をして臨み、かなりの準備を重ねた文章を読み上げたり、滔々としゃべりまくったりして、白熱した議論は心地よい光景を織り出す。百人も千人も集まるこのような学会での大きな楽しみは、期せずして知人、友人に再会したり、意外と続く新しい出会いを作ったり、あるいは活字でしか知らない人間と面識を持ったりすることだ。一方では、これだけ長年続いてきた行事には、確実な変化が起こっている。すぐ気づいたのは、求職面接という、かつては大きな活動内容の一つはなくなったことだ。印刷されたプログラムは前もって送られてくることはなくなり、しかも要旨はすべてオンライン利用となり、さまざまなところで合理化が進んでいる。そして、共通の言語はあくまでも英語で、それを得意ではない研究者による発表は昔からあったが、いまはとりわけ英語を研究に用いない有名な学者たちが登壇することが目立つようになった。一つの言語を使い慣れるための条件には、どう話すかよりも、なにを話すかがより真剣な試練が待ち受ける。それに対応して、なにを話そうとしているのかをはっきりと聞き出し、きちんと聞き留めることは、聞く側の責務だ。

今度与えられた役目は、コメントをするのみだ。その場は、大会最終日の明日に持たれる。はたしてどのような会話が交わされ、どのような刺激が待ち受けているのか。わくわくしている。

AAS 2012 Annual Conference

0 件のコメント: