例年のように、大学が始まったら学期末まで一気に走り抜く。そのため、学会に出ることなど、せいぜい一回ぐらいが限度だ。今年のその一回だけの集まりは、この週末にかけてオタワで開催されたものだった。久しぶりに会う研究者たちとの会話など、いつもながら実り多いものだった。
いろいろ出てきた話題のなかには、あのデジタル著作権のことがあった。今月一日から発効するようになった、いわゆる「違法ダウンロード」のことである。どのような経緯によって出来上がったのかは今になっても詳らかに伝わらず、内容もあれこれと理解に苦しい。あえて言えば、根拠も熟慮もなければ、その上有効性だって疑わしい。すこしでも後ろ指を指されたくないという、潔癖と表現したくなるような倫理感覚だけが必要以上に目立つ。しかしながら、それの裏に隠されがちな問題はけっして少なくない。その最大な落とし穴は、有意義な知的生産を妨げる結果になりかねないことだ。はたして話によれば、一部の私立大学などでは、教員には校内ネットワークでのダウンロード機能停止、クラスではダウンロード資料を一切使わないとの内規が出されたと聞く。「違法ダウンロード」は、いつの間にか「ダウンロード違法」に化けてしまった。機関の運営の立場から考えれば、拡大解釈、過剰規制だと非難されようと、そのような対応は一番簡単で安全だろう。ただそれによって生じた結果、有効な資源が使えなくなるとの実害は、どう考えるべきものだろうか。これを明らかに問題視し、しっかりと議論しなければならないと思う。
学会では今年もデジタル関連でささやかな発表をした。直後の質疑応答において、ユーザーの所在、協力体制、技術のスタンダード、研究者の役目など、さまざまな話題が出てきた。そしていささか言葉が必要とする著作権のことだけは、発表の席で答える余裕がなかった。そのため、ここに短く記しておく。
2012年10月14日日曜日
デジタル著作権
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