2013年3月9日土曜日

最古の地図

今週もまた小さな研究発表を聞く機会があった。その中で、極めて常識なものとして、世界最古の地図のことが触れられた。この頃、意識せずに繰り返し地図というテーマに戻り、かつ最古となれば、関心を持たずにはいられなかった。

130309その地図というのは、「バビロニアの世界地図」と通称されるものである。作られたのは、紀元前4世紀とも7世紀とも伝えられ、いまは大英博物館に所蔵されている。小さな粘土の板に、上半分には楔形文字によるテキストが記入され、下半分は世界の全体像が描かれている。その世界というものは、上方にバビロンが位置し、縦にユーフラテス川とチグリス川が流れ、周辺には山や主要都市が書き込まれる。さらにこれらをすべて囲むには、「しょっぱい水」との文字で指示された海があり、その向こう側には想像の土地が広がっている。真ん丸い帯の形をした海、四角いバビロンなど、地図全体ははなはだ形式化され、そのバビロンのある北の方角を上に位置させることなども併せて、地図としての抽象された要素が明確に表現されている。

このような確実な実例を目の前にし、2500年以上に及ぶ地図というものを考えて、戸惑いを覚えざるをえないことだろう。そもそもこれこそ地図というべき大事な要素を備えたものにほかならない。対して、いまごろのオンラインの地図などとなれば、衛星写真、航空写真、街を走行する視線、リアルタイムの定点観察など、静止画から動画までフルに活用され、「地図」というものは限りなく精細にして具体的なものに変身を遂げた。ここまで表現の手段を駆使した現在のわれわれにとって、地図において地形や位置を記録し、それを抽象的に捉える余地、あるいはそのような必要がはたしてまだあるのだろうか。

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