2013年7月14日日曜日

巨大絵巻

今週はいささか遠いところを旅した。乗り換えの苦労なども含めて一番の目的地は横手、目指したのは、そこから一駅手前の「後三年」という名前のJR駅だった。この妙な名前をした駅と、そしてその近くに位置する絵巻をテーマにした公園をぜひともこの目で見ておきたかった。到着時間がやや遅れ、やむなくタクシーを走らせた。人懐こい、かと言って「後三年」についてほとんど関心を持たない運転手さんの行き届いたサポートで、最小の時間でかなりのものを見てまわった。

駅に降り立ったら、展示パネルになった絵巻画面がすでに迎えてくれた。駅舎も含めて意外と新しかった。聞けば、数年前の市町村合併の結果として、駅舎が新しくなったとのだと、運転手さんが説明してくれた。公園のテーマは、戦ではなくて、平安。ただし、どうやらなんらかの手掛かりがあったわけではなく、ただ広い、京都の感覚から言えば倍ぐらい大きな橋が真ん中に据えられ、ほど近いところに「後三年」絵巻から数場面のみ取り出したレリーフが楽しいハイライトを成した。絵巻の場面を思い切って大きなサイズにする、再現するにとどまらずに、それを浮き彫りにする、こういった巨大化、立体化した対処は思いのほか少ない。巻物という既成概念からすれば、その枠から飛び出して、自由に内容を伸ばし、それがもつビジュアルな魅力を大胆に見せるという意味では、とても望ましい試みではないかと大いに感心した。

130714一方では、「後三年」とは、そこではあくまでもご当地の自慢という文脈で息づいていると見受けられる。しかも、駅の巨大看板や写真パネルなどを見てすでに気づいたのだが、看板もパネルもレリーフも、いずれも当地出身の画家の模写を再現しているものである。権威あるオリジナルものは重要文化財に指定されて、このような使い方だと、その気さえあればけっして不可能ではないはずだ。なのに、あえて画家の個性が存分に盛り込まれた画作が用いられている。ここに、模写のある風景がかなり強烈なメッセージを発信してように感じてならない。

平安の風わたる公園

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