2013年10月12日土曜日

アリス・マンロー

クラスでは、現代文学、とりわけ日本のノーベル文学賞作家の話をしている。それだけに、年一度の発表のニュースにいつも以上に関心を持ち、それも今年は珍しくカナダの作家が選ばれ、さっそくこの話題をクラスに持ち込んだ。

131012思えば、この作家の名前も、すこし前に学生に教わったのだ。読書好きの学生から、実際に本人と会えたのだとの自慢話だった。20人そこそこのクラスで訪ねてみたら、ほぼ全員は、この作家のことならもちろん知っているという答えだった。しかしながら、このような質問を投げ出している講壇のわたしは、ほとんどまったく無知に近い。それもあって、受賞の記事を読んだら、さっそくオンラインでアクセスできるものを探して、とりあえず二編ぐらい読んだ。率直な読後感と言えば、とてもいい感じのものだった。取り上げられている生活や人物は、日常生活とほどよい距離を持っている。書き方としても、端正で抑制が効いていて、かといってストーリには十分な山場が用意されて、けっして飽きさせない。近年の純文学にありがちな難渋なところもなければ、去年の受賞者のような、過剰としか言いようのない饒舌さもなく、味わい深い。もうすこし読みたくなり、市民図書館の、それも電子書籍の部に入り、読み物、そして朗読録音などを見つけて、予約リストに名前を連ねた。いまのところ順番は十番目以内だが、実際にいつごろ借りられるのか、これ自体も一つの小さな楽しみになっている。

ところで、同じ文学賞発表について日本の新聞記事を見てみると、どんなに短い記事でも、タイトルには日本作家が受賞を逃すと打ち出す。完全に型にはまった報道の仕方は、まったく読ませる気持ちが伝わらない。自国の作家に関心があることが分かるにしても、ここまでなるとちょっぴり不健康ではなかろうか。もうすこしバランス感覚を取り戻してほしい。この文学賞について言えば、そのような時間的な余裕は、十分にあるはずだ。

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