ちょうど去年のいまごろ、京都をテーマにした講義で「洛中洛外図屛風(舟木本)」を取り上げ、その一部をこのブログにも記した。今年も同じ講義をしなければならず、関連のことを調べたら、ちょうどいまごろ、これがメインの出品の一つとして、京都がテーマの展覧会が開かれようとしていることを知った。しかも展覧会にあわせて新規のタブレットアプリまで制作された。展覧会は無理でもアプリを覗くのは同じだと、わくわくした気持ちでさっそく試してみた。
屏風アプリは、中味から言えば、初心者には十分な内容があった。迫力ある精細画像、かなりポップな解説152ケ条、検定と称する知的遊び、普通のカタログやパンフレットなどと比べれば、遥かに充実した内容を出している。狭い意味での電子メディアの応用という角度から考えても、一つの開発、利用の方法として多くのヒントを提示している。すでに長く公開されている「e国宝」と根本的に違って、すでにあったデータベースへのアクセスではなく、特定のオリジナル内容を拵えて独自のプレゼンをしている。そして、販売方法も、あの「産経新聞」アプリと同じく、サイズの違うデバイスで、無料と有料の両方を同時展開している。いまだ電子メディアの姿が定まらない中、貴重なアプローチだと大いに応援したい。
アプリのハイライトは、屏風の画面をめぐっての文字説明である。ただ、ここで文字と画像は、それぞれ独立したものに止まった。突き詰めて言えば、デジタルメディアが両者の融合した説明の方法を可能にしたにも関わらず、屏風の画像を満遍なく解説する知識も、そういう知識の建て方もわれわれはいまだ手に入れていない。たいていの古典のテキストなら、たとえば大学院院生のゼミ発表だって取り上げているが、そのような実践は、古典画像の解読ではいまだ広く行われていない。これから地味に続けるべき大事な課題だ。
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