2013年11月23日土曜日

ハリウッドRONIN

来週最初の講義のテーマは、江戸の武士。教科書は、政治の執行者、道徳の手本という二つの側面を大きく強調している。それにあわせてあれこれと準備を進めていくと、今年も映画「47 ronin」が上がってきた。ずいぶんと苦労し、脚本も制作もかなりの紆余曲折を経たのだと伝わるが、映画館ではすでに予告編が流されているから、今年こそ無事上映することだろう。

師走となれば赤穂ものと、いつからかこういう相場が出来てしまった。それにしても北米までこの習わしに加わったとは予想もしなかった。しかしながら、予告編を見ていて、はなはだ呆れた。どこでどう苦労し、何を勘違いしたのか、さっぱり見当が付かない。僅かな情報からまとめてみれば、討ち入りの対象は、まったくの異界となってしまった。よっぽどの面倒があったからだろうか、この世とのつながりを映画はばっさりと切り捨てた。残されたわずかな関連と言えば、刀を武器にする以外、47という数字、そして、その数の人間たちが切腹した、といったところだ。予告にはその切腹シーンがきちんと入っている。集団で集まり、全員白装束して、反対側の人間が一人も見えない設定の中で、与えられた畳を前に妙に恭しく一礼する。設定としてはさすがに新鮮だが、長い伝説にビジュアル的な想像の新たな一頁を加えられようとしていることを思えば、気が重い。クラスでちょっぴり釘を刺しておかないいけないとしっかりとメモをした。

関連するニュースなどを見てみれば、すこし前のものだが、主演俳優の真面目なインタービューが乗っている。しかし語られたことと言えば、中国の武術、それも太極とやらの流派の師匠から指導を受けたことを嬉々として自慢気に語られている。同じ俳優は、夏に公開した、とある漫画をテーマにした武士もののファンダジー映画を主演したばかりだ。セットなり、ひょっとしたら画面まで使い回しをしていないかと、ツッコミを入れたくなった。

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