「shunga」という言葉は、このままの表記で英語の語彙に入ろうしている。そのための大いなる一歩は、現在大英博物館で開催されている特別展にほかならない。英語での新聞に止まらず、日本国内の新聞や週刊誌も揃って取り上げている。それも子供が登場した絵が展示から除外されたとか、このようなテーマの特別展はいまの日本で難しいとか、話題にこと欠かさない。
気軽に大英博の公式サイトを覗いた。現在進行中で、トップに挙げられている4つのテーマの二番目という位置に付けられている。展示のキャッチフレーズは、「他所とは一線を劃す日本の版画、絵画を発見しよう」である。特設ページにアクセスすると、まず目に飛び込んでくるのは、映画の予告編さながらの紹介動画である。言葉通りに、ここでshungaが動いている。ただ気になるのは、その動き方、あるいは動かして見せようとする絵の魅力の捉え方である。古典の絵に動きを加えるとなれば、まさにさまざまな可能性が選ばれる。絵の内容とリンクすることは、事は会話やら労働やらではないから、この場合遠慮して除外するとしても、あとは浮世絵だから、版を重ねて色を付けだしていくとか、木版そのものを彫り出すプロセスとか、多く考えられる。しかしがなら、ここの動画はあくまでもポップな音楽にあわせて絵の線が白紙の上に広がるという、今どきのパソコンソフトが提供しているスタンダードな処理方法に頼ったのだった。肉筆と木版との区別さえ定かではない、ひいて言えば主な展示品についての誤解さえ招きかねないもので、残念でならない。
金曜日の講義の内容は、まさに浮世絵だった。それも教科書は、わざわざ数行を割いてshungaを記述している。このヨーロッパでの出来事は、まさに最適の脚注なので。ただクラスが終わって、熱心な学生に聞いたら、まったくの初耳のものだったとか。「shunga」という言葉が英語に定着することなど、いまのところあくまでも幻なのだ。
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