郵便局は薬局の中、はなはだカナダ的な風景の一つだ。ふだんは訪ねることが少ない。荷物を受取るということで立ち寄り、きれいな切手に目を惹かれた。そういえば、中国のお正月が過ぎたばかりで、今年も午年の切手が出されている。しかも特別記念セットとして、行く年来る年よろしくと、去年の分と合わせて一枚に纏められ、とても洒落に仕上げられている。使う気もないまま買っておいた。
カナダ郵便局の公式サイトで確認すると、モントリオールで活躍している芸術家のデザインによるものとのこと。ならば馬の絵柄も色もオリジナルなものだ。輪郭だけで描き出された馬は、去年の、まるで巨大な草食動物の唇をした蛇とは、対極した着想を見せている。輝く黄金色もいかにも東洋の感覚を醸し出している。ただし、切手の中やセットの背景に大きく施された「馬木」という二文字は、どうしても解せない。この二つの文字は、どう読んでも馬と木だ。ただ中国語として、年のこともふくめて、このような語彙は知らない。はたして何を意味し、どこから生まれた言葉なのだろうか。さきごろの公式サイトの説明を読みなおして、すくなくともデザインした人の意図が分かった。いわゆる五行説で馬は木に属する、とか。もっともらしい説明だが、それぞれそれなりに考えられたのだとしても、こうして並べられて伝わるものとはとても言えない。
カナダという社会の中で繰り返し出会う、いわゆる東洋文化への漠然とした表現と認識の、その中でもきわめて極端な実例の一つに数えられよう。中国文化を象っているだろうけど、妙な組み合わせになってしまい、けっきょくはまったくピント外れとなってしまう。中国の、それも現在の常識に合わせようとしない、あるいは中国文化の博大な内容はこのような理解や享受まで受け入れていると言えば、それまでのことだが。
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