2014年4月19日土曜日

摸写の創意

絵巻は摸写されていた。そのような摸写の作は、実はかなりの数に及び、しかもその多くは今日まで伝わっている。わざわざ絵巻を摸したのだから、きっと全神経を使い、ありったけの注意を払って、オリジナル絵巻に似せるようにしたに違いないと想像されがちだが、現実的にはそれに程遠い。しかも、たとえば技術的に不可能だといったような理由で簡単に片付けられるようなものでもない。

20140419「後三年合戦絵詞」の摸写作品を披き、配色のことを取り上げてみよう。それこそ千差万別であって、原典を円心に置くとすれば、その出来栄えはきれいにさまざまな方向に散り張っている。中には、内容に関係なく豪華な配色もあれば、最初こそあれこれと色を試して、途中になってまるで諦めたかのうに色を投げ出したものある。色を一切退けて、流暢な墨線のみによって絵を描きおこして見る者を関心させたと思えば、こまこまと色について文字で指示を示して、そのような情報をどうやって受け止めるべきかと戸惑いを感じずにはいられないものもある。さらには、巧妙な色感覚を披露して、原典の様子にお構いなく、それ自体が一つの独自に統一された美しい世界を演出している。(写真:大英博物館に所蔵されている「後三年」摸写本より)

以上のような「後三年」摸写の諸状況を纏め、ささやかな分析を加えたものが最近活字になった。今度もまた印刷した抜き刷りは郵便の手違いでいまだ手元に届かず、代わりにさっそくオンラインで公開されたお陰で電子ファイルで読めるようになった。あわせてここにリンクを添えるので、関心ある方はどうぞ目を通してください。

絵巻の摸写から何を読み取れるか

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