国文学研究資料館に行く最寄りのモノレール駅には、同館を紹介する小さなショーウィンドウが設けられている。丁寧に飾られていて、思わず足を止めて眺め、ついにカメラさえ取り出してスナップを撮った。
展示の主役は、古典の絵や文字である。それも陰影を付けたり、画像を切り出して立体的に見せたりして、楽しい工夫が施されている。その内容は、百人一首の色紙や王朝絵巻の詞書や絵、翻字がそえられて、古典の文字への知をそそっている。簡潔に用意されたパネルは、研究機関である資料館の紹介とともに、道順が示されて、駅に必要な近辺案内の役目を果たして唐突感を和らぐ。よく見つめていれば、限られた空間において、たとえば著名な研究者の紹介や研究成果の宣伝などは一切なく、あくまでも古典という世界への想起を促し、それをテーマにする研究活動が地道に行われているということを告知している。もっぱら国の予算をもって運用して機関だという性格からすれば、とても良心的で良識的なものだ。一方では、たまにしか訪ねて来ない研究者たちも大勢ここを通りすぎていく。自分もその中の一人だが、自明でいて追求をつねに必要としている世界も、一歩外に出てしまえば、普通の人々の目にはこのように映るものだと、あたらめて知らされ、思わず襟を正す思いがした。
同じ駅を起点に、さらに国語、極地などを対象にする研究所が建っている。きっと代わり代わりにこのスペースを使っているに違いないと推測している。はたしてどれも似たようなアプローチを取っているのだろうか。
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