国際研究集会に招かれ、この週末、東京に滞在している。厳しいスケジュール覚悟で弾丸旅行をし、さまざまな会話や新たな知との出会いにわくわくしながらの三日となった。今度は運悪く飛行機の機械故障に巻き込まれ、まるまる8時間も予定より遅く到着し、しかも飛び立った空港に逆戻りをさせられ、消防車の出迎えを受けるというまったくめでたくないハプニングに見舞われた。いうまでもなく無事に済んだあと、すべて楽しい会話の種と化した。
東京は半年ぶり。初冬の街並みを見たのは、もうすこし前のことだったが、それでもそんなに昔のことではない。激しく移り変わる日々ではあるが、大きな変化は何一つないとも言える。雪に包まれた町からやってきたら、きちんと緑色を見せている芝生や葉っぱにはやはり感激してしまう。紅葉や黄葉を見せる並木も残り、季節の移り変わりをあらためて知らされる。時差で朝は余計に早い。街角に出かけてみれば、忙しく動き回る配達の車や丁寧に歩道を清掃するふつうの住民の姿は相重なり、昼や夜のにぎやかを思い浮かべれば、まるで舞台裏を覗いている思いだ。人々の会話はあくまでも静かで落ち着いていて、他人への思いやりを礼儀としている。昼にでもなれば、まわりの様子は一変する。とりわけ若者に目を向ければ、週末になっていることもあるだろうが、派手やかに着飾って町を闊歩する女の子が目を惹く。なかには友達とそろって黒い文字を頬に刺青スタイルで大きく描いている。文字の意味は読み取れず、いつからの流行なのか分からないが、なにかのファンクラブだとすれば効果的な出で立ちだと言えなくもない。夜が深ければ男女のカップルの姿が目立つ。なかには明らかに未成年の若者は、学校制服のまま手を握りあって颯爽と駅を横切る。対して、人々が慎重に避けて歩いている道端には、反吐が散らかされ、しかもその中に一本のネクタイが捨てられることは、妙に真剣な苦しみを訴えている。
日本の文化を教えるクラスでは、毎回の初頭に日本からの写真を見せて、なんらかの日常を説明することが定番になっている。これらの風景は、考えてみれば最高の教材だ。写真をさっそく整理して、つぎのクラスに持ち出そう。はたしてどのような印象として学生たちの記憶に残るだろうか。
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