学生たちとともに一冊の小さな電子ブックを編集している。いくつかの段階を経て、目下の作業は、タイトルを決めることである。いうまでもなく大切なもので、作品の受け止め方を大きく左右する。学生たちの意見も聞き入れながら、あれこれと試しながらも、思わず小説出版の実績まである同僚に助言を求めた。
聞かれた同僚は、こういうことは得意分野で、大いに協力しようと快い返事をしてくれた。そして、約束通りに一日かけてじっくり考えたすえ、はっきりした返事が送られてきた。提案されてきたタイトルには「Redux」という言葉が入っている。自分ではとても思いつかない、個人の語彙にはまったく登録されていないものである。それどころか、英和辞典を調べてもぴったりした解説が見つからず、あれこれと参考書を読み比べて、ようやくラテン語に由来するもので、文学的なタイトルに使われる表現だと分かった。そこで、辞書ではなく、仮想したタイトルをまるごとサーチにかけたら、似たような書名や論文名は複数出てきて、まさに文脈にぴったりふさわしいものだ。
素晴らしいタイトルの基準とは、簡単、明瞭、キャッチにある。いうまでもないことだ。それにたどり着くには、ユニークな、特定の文脈のみに使われる言葉を選んだり、あるいはきわめて分かりやすい言葉を取り出して、普段はされていない組み合わせを慎重に作り出したりすることである。こう記していれば、まったく新味のない理想論に聞こえてしまうが、実際にこれを可能にするには、やはり日常の読書だろう。今学期の担当クラスの一つには、少人数の学生たちを対象にする作文があって、週一回のブログを書かせている。それこそタイトル選びは一つの基礎作業だ。初心者の学生たちには、繰り返しの実践を通じてこれを体感してもらおうと心がけている。
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