いまごろ、桜が大いに咲いている。今年の春は、開花が早いだの、皆既月食だの、話題が尽きない。日本語学習者たちに向かって、テレビニュースを見せながら、花の下に座って飲み食いをしなければ「お花見をした」とは言わないのよと説明したら、一様に感心した表情が戻ってきた。そこで一つのささやかなことをここに記しておこう。
日本語を習ったところの学校は、去年の秋に創立五十周年を迎えた。祝賀行事の呼びかけに応えて、同じクラスに通っていたクラスメートたちは、桜を贈ろうと思いついた。話が上がったのは、行事まで一年前のことだった。さっそく行動に移り、当時三十二人のクラスメートのうち、賛同した三十名は、決まった金額を熱心なリーダに送った。そこからの展開は、すごい。苗の購入、土壌の改良、植樹の儀式、はては記念石碑の作成、すべてほんの数ヶ月の間にみごとに実施され、完成されていた。しかも提案からわずか半年の後の去年の春、きちんと花が咲いたものだった。まさに「中国スピード」。地球の裏側からは、ただただ目を瞠る思いで見つめるものだった。
それからさらに一年の時間が流れた。この土曜日、クラスメートの数人は花見で集まっている。遠くから駆けつけることが適わない面々はチャットルームで盛り上がっている。ちなみに花の下で酒を飲み交わすことはさすがになくて、一同はレストランに移動して歓談を繰り広げたとか。国が違うことを思えば、これもいたって自然な変容と言えるだろう。
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