一学年の講義は水曜日に終了した。これと同時に、若者中心の活動はいっそう活発になった。中では、かなりの伝統をもつ大掛かりなイベントが開催されている。日本風に言えば「漫画フェス」、週末にかけての四日に及ぶ日程で、千人単位の入場者が予想されている。一人の学生に誘われたまま、一席の話をしてきた。そしてまたとない機会とあって、カメラを片手に会場をゆっくり歩きまわり、見物してきた。
イベントの構成は、さまざまな規模のトークショーと、数えきれないほどの出店という二つの内容につきる。前者のほうでは、かなりのファンが付いているアイドルたちが主役となる。かれらの分野は、コミックやアニメの作者、音楽家、俳優や声優から、流行をリードするコスチューム作家など多岐に渡り、その影響力に応じて簡単に数百人がトーク会場をいっぱいにするものだった。一方ではいくつも続いた巨大ホールを占領したのは、無数の売店。並べられている商品は、けっしてやすっぽいシャツやおもちゃには止まらない。りっぱな毛皮、触らせてお金を取る蛇や巨大とかげ、数人が一斉に横になっているタトー入れの現場などを見て、つくづく普段の想像力では適わないと知らされた。そして、イベントの主役は、なんと言ってもコスプレー。奇抜なコスチュームを身に纏ったのは、来場者の二割といったところだろうか。その内容はまさに奇を競うものなのだ。アニメキャラの服装はおよそスターンダード。LEDライトを仕込んだスカート、音声変換のスピーカを隠したバックバッグ、室外の草むらに身を隠す偽装、長い尻尾を引っかかっての曳行などなど、まさに枚挙に暇ない。熱気あふれる人々の中に身を置いて、大昔からの市場の存在やその原理を思い出す。まさに年一度の祭りであり、日常から抜け出す非日常の仮装なのだ。
話の場は、高級ホテルなみの、椅子ばかりいっぱい詰めた綺麗な部屋だった。ただ集まってきた聴講者の一部は、奇抜な身なりやコスチュームのままだ。しかしながら、それでも非常に要領の得た質問も戻ってきた。ちょっぴり学問っぽい話しかできなかったが、それでもまったくの無駄ではなかったような実感を覚えた。
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