小さなプロジェクトに取り掛かっている。来週は、京都のど真ん中にあるすてきな博物館で「デジタル・ミュージアム展」が予定されていて、このプロジェクトも研究展示の一つとして登場し、予告リストの最後の最後に顔を出している。ほんのおまけのようなものだが、それでもどのような関心が寄せられ、如何なるコメントが残されるのか、興味津々だ。
今度の狙いの一つは、絵巻の絵の中に入り込み、その構成の部分々々を分解して眺めることだ。詞書に触れられたものだけ取り出すという作業を通じて、古典言葉のデジタル図解を構築しようとする。絵の中に分け入って探索することは、まじめなアプローチであると同時に、絵を自在に操(切り取)ろうとすることを意味する。その間のチャレンジはじつに数多い。その筆頭にあげられるのは、やはり著作権という言葉で捉えられるものだ。百年単位で数える古典作品であれば、使用の権利からの束縛は少ないはずだが、じっさいはとてもそうはならず、なかなか厳しいものがある。絵を公開するのは所有者本人のみ、公開されたものについては、追加(あるいは分解)的な処置を取らせない、というのは一通り現在の常識だ。このような立場は、公開された画像を安全に管理し、絵画内容が悪用されては困る、という考えから来たものだろう。そのために、自由な使用についての許可を取得することは非常に難しく、そういう制限から作業に取り掛かる勇気が出てこないまま逡巡してしまうのが、いまの現状だ。活発で多様な利用を通して古典がより現代人の生活に入り、いっそう生命力を発揮するものだと言いたい。それがつぎの発展段階の現象になるのだろう。
このような見立てを面白いように伝えているには、研究とは無縁の、あくまでも「遊ぶ」ということだが、最近いささか話題になっているユニークなサイトがある。「鳥獣戯画制作キット」と名乗るもので、いたって単純で、さまざまな意味でヒントを与える。先月まで東京国立博物館で大々的に展示され、大いなる関心を集めたあの古典画像は、ここまで極端な使い方をされているものだ。サンプルとして提示されているものも、センスが良くて微笑ましい。はたしてどこまで正規の許可が得られているのか、公開されている情報からはよく分からない。このような、遊び心いっぱいのものまで、デジタル画像の公式サイトになにげなく顔を覗かせるようなことを、心待ちしたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿