古典の作品、とりわけ絵の付いたそれを声で届けてみようという試みは、これまで少しずつ続けてきた。その間、音声入力、動画制作、そして保存や伝播関連の技術が進化し、いろいろなことが手軽に出来るようになった。新年にあわせて、ここに一篇の新しいタイトルを加える。御伽草子の代表作「あきみち」である。
物語は、まずなによりも、面白い。並の秩序が守られていなかった世の中における武勇談だが、そこに色仕掛けの知恵比べ、悪人退治、血を血で洗う復讐、そしてか弱い女性の勇気と性、目まぐるしいほどの多彩多様な要素がいっぱい詰まっている。物語の内容や影響力にふさわしく、これまでには繰り返し研究の対象となり、注釈付きの本文まで作成されている(「日本古典文学大系」38所収)。それらの成果を参照しつつ、朗読に選んだ底本は、国会図書館に所蔵され、デジタル公開されたものである。あわせて五十二帖(そのうち、挿絵十六枚を含む)、約一万二千文字の分量である。格調高く書写された本文、可愛らしい挿絵、ともに古典の魅力を伝えている。すべての画像をAdobe Premiereに読み込み、時間軸に引き出して赤い罫線を被せ、朗読にあわせて罫線を動かしながら読まれている文字を指し示す動画を仕立てた。
「あきみち」の全文朗読動画は、上下あわせて五十分強の長さにわたる。YouTubeにアップロードした。現在の日常生活において、これだけの動画を終わりまで見続けることは、ささやかなチャレンジだろう。そのような余裕がありそうだったら、ぜひ動画にアクセスし、音声に耳を傾け、変体かなの文字に目を凝らしてみてください。きっとよい経験になるはずだ。
「動画・あきみち」(一)(二)
2017年1月7日土曜日
動画・あきみち
Labels: 絵巻を愉しむ
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿