2017年7月9日日曜日

手紙の姿

一年以上まえの古いニュースである。まず、興味があればこのCNBCニュースをクリックしてみてください。一枚の絵の紹介ではなく、絵を眺める人(この場合はかなりの有名人)の視線と機敏がキモになるものである。話題性があって、知的で楽しい。同じニュースを敷衍した記事もあり、かつ日本語に訳されている

有名人の遊びに付き合い、記事にあったように、同じ絵からはさらに自撮り棒やらイヤホンやらを探し出すのも一興だろう。一方では、絵が表現しようとするテーマをそのまま素直に見つめるのも、刺激的だ。手紙という、人々の交流の基本形。この絵には、350年も時間の隔たりを感じさせない生き生きしたものがある。手紙の本体はすでに披かれ、女性の膝の上に置かれ、繰り返し読み返されたあとのことだろう。対して男性の手の中に握られたのは、手紙に添えられたカードのようなものではなかろうか。となればタイトルにあった一方向の手渡しよりも、男女がともに手紙を読み、これを語り合う状況となる。こうなれば、玄関という空間、立ち位置や服装から見る男女の間柄、そして子どもやペット意味合い、一つ一つ気になる。日本風に言えば世俗風景を明らかにするためには、画面を産んだ時代や生活の知識が読む人を無限に誘っている。

この絵に惹かれる理由は、いうまでもなく「絵師草紙」のあの有名な場面があるからだ。玄関と縁側とはまずしっかりと対応している。しかもいままさに送られた人の手に届かれようとしているという絵師の構図は、この絵のタイトルにこそ合致し、さしずめ「家の縁側で主人に手紙を渡す男」と命名したくなる。手紙の姿、そしてその授与のあり方は、意外と共通の関心を集める大事なテーマだ。

家の玄関で女に手紙を渡す男

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