今週伝わってきたニュースの一つには、京都大学付属図書館がこれまでの貴重書デジタルデータベースをリニューアルして、「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」と名前を改めて公開したのがあった。約1,500タイトル、約14万コマという分量もさることながら、画質やアクセスの方法など、まさに現時点のデジタル公開の最先端を代表するものである。わくわくして内容を眺め、さっそくにでも三週間ほどあとに予定されている一つの特別講義にこのアーカイブに収録された「弁慶物語」をとりあげることに決めた。
正確で完全な記録はきっとどこかに存在していると思うが、京都大学は古典画像資料のデジタル公開に一番最初に取り掛かった機関の一つである。手元に残っているものを見れば、早いものは1994年前後に遡り、現在でもアクセスできる「國女歌舞妓繪詞」の最初の「WWW版」は1996年1月と記され、その画像のサイズ(625x462)は、いまのサムネイルと変わらないものである。しかしながら、インターネットを通して御伽草子の画像を見れたとの当時の興奮はいまなお記憶に新しく、なによりも多くの出版物のカラー写真だってまさにこの程度のものだと付け加えておかなければならない。
このように考えれば、図書館の役割をあらためて見直さなければならない。もともと図書が集まるところだった図書館は、いまやデジタルという新しい性格の情報を作成し、それの公開の仕方を模索して実践するところに進化したのである。印刷された図書を貸し出すという在来の方法とは根本的に異なるデジタル情報の利用には、どのような未来が待っているのだろうか、まだまだ明確な答えができたとは言えない。情報メディアにおいて、むしろ図書館が一歩先をリードしている。今度は用意された資料をどう利用するのか、研究者たちが本領を見せる順番になる。
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
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