2017年9月9日土曜日

京都大学デジタルアーカイブ

今週伝わってきたニュースの一つには、京都大学付属図書館がこれまでの貴重書デジタルデータベースをリニューアルして、「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」と名前を改めて公開したのがあった。約1,500タイトル、約14万コマという分量もさることながら、画質やアクセスの方法など、まさに現時点のデジタル公開の最先端を代表するものである。わくわくして内容を眺め、さっそくにでも三週間ほどあとに予定されている一つの特別講義にこのアーカイブに収録された「弁慶物語」をとりあげることに決めた。

正確で完全な記録はきっとどこかに存在していると思うが、京都大学は古典画像資料のデジタル公開に一番最初に取り掛かった機関の一つである。手元に残っているものを見れば、早いものは1994年前後に遡り、現在でもアクセスできる「國女歌舞妓繪詞」の最初の「WWW版」は1996年1月と記され、その画像のサイズ(625x462)は、いまのサムネイルと変わらないものである。しかしながら、インターネットを通して御伽草子の画像を見れたとの当時の興奮はいまなお記憶に新しく、なによりも多くの出版物のカラー写真だってまさにこの程度のものだと付け加えておかなければならない。

それに対して、今度のリニューアルの大きな眼目は、サイトの冒頭に掲げられているように、「デジタルアーカイブの国際規格IIIFに対応してい」ることである。ここに来て、画像の公開にも、各自適宜に判断するのではなく、国際的に頼れる規格というものが存在するようになった。このIIIFの規格というのは、たとえば画像の色彩や解像度などを規定するものではなく、デジタル画像そのものの相互利用の利便を目指すものである。具体的には画像の見せ方、引用の仕方、そして画像内容に対する文字情報の追加などに細かな工夫や配慮が図られている。言い換えれば、京都大学のデジタルアーカイブの歩みにおいて、画像資料公開における20年の進化が集約されている。それは、画像の解像度が高くなったり、通信スピードが速くなったりするようなところに止まるものではない。突き詰めて言えば、画像を閲覧させることから、それを利用させることへと進化したものである。

このように考えれば、図書館の役割をあらためて見直さなければならない。もともと図書が集まるところだった図書館は、いまやデジタルという新しい性格の情報を作成し、それの公開の仕方を模索して実践するところに進化したのである。印刷された図書を貸し出すという在来の方法とは根本的に異なるデジタル情報の利用には、どのような未来が待っているのだろうか、まだまだ明確な答えができたとは言えない。情報メディアにおいて、むしろ図書館が一歩先をリードしている。今度は用意された資料をどう利用するのか、研究者たちが本領を見せる順番になる。

京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

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