2017年9月2日土曜日

動画・からいと

カナダの大学の新学年は、九月をもって始まることになっている。夏は終わった。静かに流れた時間を記憶するために、古典朗読のタイトルをさらに一点制作した。今度も同じくYouTubeで公開することにした。

とりあげたのは、御伽草子に収録された一点、「からいと」である。底本は、国文学研究資料館所蔵で、「日本古典籍データセット」から公開されたものである。原典は上下二冊、あわせて三十五帖、約一万二千文字。これをややゆっくりしたスピードで読み上げ、約一時間強の長さの録音となる。文字の上に朗読の箇所を示す罫線を動かすという、これまで何回か試みた動画は、わりあい簡単に作成できるので、こんども採用した。一方では、原典に計十二枚の絵が挿入されている。これをベースに作品を十二の部分に分け、十二の短い動画ファイルに纏めた。

古典を朗読で親しんでもらう、美しい変体仮名への指示もあわせて提示することにより、古典文字読解の知識まで身につけてもらう、これを目指した個人的なささやかな試みである。一方では、たとえば慶応義塾大学メディアセンターが公開している「くずし字OCR」、Googleが提供している読み上げエンジンを組み合わせれば、いまの作業は自動的に完成する可能性はすでにそこに存在している。それが実際に実現されるまでに、それへの期待も含めて、いまのような努力を続けることはけっして無意味ではあるまい。

動画・からいと

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