2017年10月21日土曜日

デジタル展示・からいと

御伽草子の一篇である「唐糸草紙」を取り上げる特設ページを作成した。底本は国文学研究資料館蔵「からいと」である。これまで、「国文研データセット」(2015年11月)に収められた同底本のデジタルデータを用いて、原文の翻字・読み下し(2016年6月)、全文朗読「動画・からいと」(2017年9月)と、それぞれ違う方法でアプローチを試みてきたが、それらの作業を総点検する形で「デジタル展示・からいと」としてあらたに纏めた。

国文研本「からいと」は、十二枚の絵をもつ。この特設ページでは、これらの絵を基に十二節に分けた。各節では、簡単なストーリ紹介、画像解説、それに鑑賞コメントを用意した。これまで作成された翻字・読み下しと朗読動画は構成の中心となるが、さらに早稲田大学図書館蔵絵巻と国会図書館蔵版本という代表的な二点の底本を加え、それぞれの画像の一部を掲げて、デジタル画像の所在をリンクで示した。

この特設ページの狙いは、急速に普及を遂げているIIIFスタンダードの魅力を体感し、その利用法を模索することにある。とりわけ人文学オープンデータ共同利用センターより公開した「新日本古典籍総合データベース」(2017年4月)において、デジタル化されたタイトルにIIIFマニフェストが付与されていることを受けて、このページの構想を企てはじめた。具体的に言えば、IIIFスタンダードに載せたデジタル画像は古典資料の利用の可能性を与え、サイト構築のためのOmeka、IIIF画像利用ツールのIIIF Toolkitは身近な方法を提供してくれた。ちなみに「デジタル展示」とはまさにOmekaが用いるExhibitsというテンプレートからの着想である。用意された資源と方法に対して、研究者が取りうる行動の可能性を模索し、提示してみようとするものである。

ここに永崎研宣氏に感謝したい。OmekaとIIIF Toolkitとの融合が構想されているとのことは、同ツール公開の今年6月より前の春に氏に教えていただいた。そのあと、実際の利用に向けてさまざまな試行錯誤を経て、ようやく永崎氏からいまのサーバーでの利用許可をいただき、このページの開設が実現できた。

なお、デジタル展示に英語バージョンを用意した。原作の全文英訳は、じつは近隣にあるアルバータ大学から公表されている一篇の修士論文に収録されている。英語のみの読者にもアピールできるのではないかと、あわせて所在のリンクを添えた。

デジタル展示・からいと

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