2017年12月2日土曜日

デジタル絵解き

去る月曜日、笠間書院から「日本文学の展望を拓く」五巻が郵送されてきた。待ちに待った出版である。手元の作業を投げ出し、小包を開き、いずれも400頁近い新刊を後から後から捲った。まず頭の中に浮かんできた言葉は、ひさしぶりに体験し、強烈に伝わってくる「書の香り」だった。

わたしが投稿したのは、「絵画・イメージの回廊」に取り上げられた絵画メディアに沿った一篇である。論考の内容は自由に選んでよいという寛大な編集方針に甘えて、デジタル関連の最近の仕事を報告することにした。そもそも紙媒体の出版物にデジタルの作業を説明する機会はかなり限られている。そんな中で、与えられた貴重な紙幅を用いて、ここ数年手探りで試みてきた画像、音声、動画などの異なるデジタル方法を絵巻の読解に応用した経緯、成果、そしてそれに掛けた思いなどを纏めた。そして、この一連の実践を一括りに「デジタル絵解き」と名付けて、絵に向けてきた歴史的な視線との関連、連続、継承を訴えようとした。

今週オンライン全文公開された「リポート笠間No.63」において小峯和明先生が自ら触れられたように、このシリーズは小峯先生の古稀記念のために企画されたものである。思えば、いまからちょうど20年まえの1997年の夏、外来研究員として立教大学に招かれた以来、小峯先生にはその教えに接し、研究や生活などにおいて数え切れないほどのご配慮を賜り、お世話になった。このブログの出発も、まさにそのような研究滞在の一つから生まれたものだった。池袋界隈での日々を覚え出し、各巻の編者や錚々たる執筆者の顔ぶれを思い浮かべて、なんとも感慨深い。

日本文学の展望を拓く

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