2008年1月23日水曜日

石山切

久しぶりに会った友人から、去年の秋に開催された徳川美術館新館開館二十周年記念特別展「王朝美の精華・石山切」のカタログをいただいた。特別展の副題は「かなと料紙の競演」、内容は昭和初期に分割さた「本願寺本三十六人家集」から92点が78年ぶりに一堂に会したというものである。平安のロマンと昭和の激動に思いを馳せながら、きっとたくさんの人々が展覧会を訪ねたに違いないと、拝観できなかったことを残念に思いつつ、友人に感謝し、二冊からなる綺麗なカタログのセットを読み返した。

一方では、このような規模の展覧会に相応しく、展示の主役をしっかりと支えた周りの出品も、どれも味わいがあって、光っている。とりわけ色紙貼込屏風、色紙貼込帖、かるた、そして伝土佐光起筆の「女房三十六歌仙絵巻」。王朝の和歌をめぐり、貴族女性を中心とした人々から、こんなにもさまざまな形でそれが楽しまれていたものだと、あらためて認識させられた。

実際に伝来された作品からにしても、歴史上のそれぞれの時代の享受者たちの熱い視線からにしても、歌仙絵というのは、明らかに絵巻の大事なテーマだと分かる。だが、絵巻を全体的に考えるにあたり、われわれは、詞と絵とストーリーという三つの要素を同時に持ち合わせることに重心を置きがちだ。したがって、和歌をテーマとする絵巻の取り扱い方には苦労している。この作品群は、はたして読者としての異なる姿勢が必要だとされるのか、それとも、例えば「三十六」という古典的な数字への執着から、古代や中世の人々が抱いていたストーリー性への志向を読み出すべきものか、とても興味ある設問である。

王朝美の精華・石山切

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