東京国立博物館にて開催されている「宮廷のみやびーー近衞家1000年の名宝」展を見てきた。平日の午後という時間台だったが、それでもすべての展示の前に一列あるいは二列の観衆が集まり、ゆっくりとした移動に従わなければならないほどの賑やかな会場だった。
展示されたのは、京都にある、世にも名高い陽明文庫のコレクションの数々の名品だった。歴史や古典に関心をもつ人なら誰もが舌を巻くような一流品ばかりが一堂に集まり、その眺めはまさに壮観だった。広い四つの展示ホールをいっぱいに飾った200点を超える展示品は、平安、鎌倉、室町と江戸と、千年の歴史に亘り、作品の内容も、日記、書簡、和歌懐紙、屏風や工芸品と、豊富なジャンルを揃えた。とりわけ「御堂関白記」(国宝)、「春日鹿曼荼羅図」(重要文化財)、「大手鑑」(国宝)、「五絃琴譜」(重要文化財)など、教科書や美術全集によく見掛けられる作品は、実物の迫力が違う。そして、重要文化財か重要美術品の、いずれも鎌倉時代伝来の七点の刀は展示の一角を占める。普段持たれている公家の代表としての藤原家のイメージ、しかもこの展示が訴えている「宮廷のみやび」からはかなりかけ離れたものとして目に映った。なお、今月に豪華版で出版される「宇治拾遺物語絵巻」も二巻ほど開かれて展示された。
一方では、展覧会を見て全体として受けた印象は、文字資料の多いことだった。これは陽明文庫のコレクションの性格というよりも、展示を企画する主催者の選択の方針によるものだろう。半分以上の観衆は、音声案内を購入して熱心に聞き入っているが、その紹介も全体の展示品の一部にすぎない。それに対して、一つひとつの展示品についての紹介は、あまりにも簡略でそっけない。展示品の下に小さな文字での翻刻を添えるだけで、翻訳や説明どころか、現代文字遣いへの置き換えさえ施されていない。いつもながら熱心な観衆の文化教養のレベルの高さを感嘆しつつ、たとえば若い学生や、時代や社会のことをもっと知りたい人々のためにもうすこし詳しい情報が提供できないものかと、おもわず首を傾げる思いだった。
宮廷のみやびーー近衞家1000年の名宝
展示作品一覧
宇治拾遺物語絵巻
2008年1月16日水曜日
「宮廷のみやび」展を見た
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