農暦では週明けから新しい年に入る。中国ではいまでもこれを一年の中の一番の祝日とし、生活習慣においてもこれから生まれる子供がはじめて辰歳とする。今年の春節はいつになく早くやってきて、しかも師走ならぬ「腊月」には三十日がなく、二十九日が大晦日だとのおまけがついている。
龍の年を迎えて、長年続いた干支シリーズの切手には新たな一枚が加わった。しかしながら皇帝の、進んで中国のイメージとまで進化した龍だから、どのようなデザインとなるのかと期待されたら、これはいささかクセモノとなり、少なからぬの議論を引き起こした。正面を切って龍が真っ向から構えてくれたことは、いかにもユニーク。全体の色合いは黄色よりも赤が目立ち、龍の胴体やいっぱいに伸ばした爪足が飾りとなり、対して白抜きにした目、無限の黒を見せた口がいかにも力(アク?)が強い。はたしてネット上でははやくも悪評が飛び交わっている。恐ろしくて、かつてない醜い龍、いまごろの国のイメージに似合わない、などの印象論から始まり、はては政治的、文化的な深読みまでなされている。いつかその昔、大晦日のテレビで「龍の伝人」という歌が人々の自尊心をくすぐり即一世風靡したことを思い出せば、まさに隔世の感を禁じ得ない。
そもそも、イメージが恐ろしいからこれを批判する理屈は分かりづらい。あえて言えば、いま流行りの漫画タッチの、なんでもカワイイと描いてしまうビジュアルの横行に関係があるのだろう。人畜無害で、癒しまでもたらしてくれるペットのようなドラゴンとは、かつて存在したことがあるのだろうか。
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