2012年1月1日日曜日

景福宮の石龍

謹賀新年。

辰年を迎えるほんの数日まえ、久しぶりにソウルを訪ねることにした。観光バスに乗って、ソウル市内の中心地にたしかに入ったと自信を持てたころ、目に入ってきたのは、いかにも韓国の風情を感じさせる石像であった。どう見ても中国の、そして日本のそれとは違う。地図で場所を確認して、改めて訪ねた。なんのことはない、ソウルではトップの観光地である景福宮である。

111231あらためて見れば、石像の「韓国らしい」ということの印象は、どうやらその風化のされ方、風化の具合に由来するかもしれない。古い石像となれば、中国ならその一部が抜ける(時にはその一部とはまさに頭だったりして)、日本なら信者の手ですり減られる、と指摘することができれば、韓国のそれは、石像全体が満遍なく年輪が刻まれ、輪郭が残らないぐらい丸くなり、しかも石の表面には風化という表現しか当たらない小さな穴が出来上がるものだ。このような結果とは、はたしてどこから来たのだろうか。使用される石材、長い冬を伴う厳しい気候、はたまた最初から突き出した部分などを避ける丸みのある輪郭が好まれるという彫刻造形のスタイル、はたしてどの推測が当たるのだろうか。いうまでもなくあくまでも風来坊的な一見さんの素朴な観察にすぎず、じっくり読書したりして、答えを求めなくてはならない。

新しい一年の干支である龍、いうまでもなく韓国もまったく同じ伝統を共有している。はたして景福宮の裏に位置する民俗博物館には、龍をテーマにする特別展示が設けられている。こじんまりしたスペースの中には、いかにも美術館らしい周到な目配りがなされて、拓本、絵画、衣服、そして陶磁器や調度などに施されたさまざまな龍の姿が一堂に集まった。温かい雰囲気の中、一足早く新年を迎えた気分にふと包まれた。

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