ここ数日、アップルをめぐるホットな話題の一つには、新しく発表された「iBooks Author」のことがある。「オーサリング」という言葉とともにパソコンとの付き合いを始めた自分にとっては、ふたたび「オーサー」が躍るさまざまな記事を読んで、言いようのない親近感を覚えた。ここでも、アプローチはまさに教科書を直近なターゲットに絞った。北米と日本との教科書事情をめぐるあまりにも大きい違いから、このような工夫への実感は、日本ではちょっぴり薄い。一方では、いわゆる電子出版へのインパクトは、想像以上に大きい。豊かな表現手段、在来のソフトから受け継いだ作業のスタイルなどに加えて、小規模な読者を相手にするならすぐにでも伝播、流通可能だということは、大きな可能性を提示している。
以上のことを考えながら、自分の手で現時点ではどこまで電子ブックを作ることが可能かということに興味を持ち、ついつい一つ手作りを試すことにした。自分に課したテーマは、極短かい時間を掛け、最小限の内容しか取り入れず、かつ最大限に違うタイプの機械で読み取れる、ということだった。そういう意味では、iBooksでしか読めないアップルの「オーサー」は、まっさきにリストから消えた。つぎに出てきたのは、同じく最近話題が多いEPUB3だった。縦書きが出来て、いかにも日本語にふさわしい。しかしながら、作ることは簡単だったが、今度は逆にiBooksでは十分な表現ができない。(左へのページめぐりが不可、章は文章ごとに切れる、など。)やむをえずEPUB2に逆戻りした。こちらのほうは、横文字にしてまったく問題なかった。レイアウトに関しては、章段目録、絵の挿入、文字のサイズ・色・枠などの飾り付け、など、あくまでも最小限のものだが、すべて簡単に実現できた。それよりも、どの機械でも読める。iOSやAndroidをはじめ、パソコンもまったく問題なし。画面の大きいiPadで開いたら、とりわけ美しい。ーーもともといまごろ、EPUB2もかなり広く受け入れられ、JavaScriptを使い、ブックマークの機能でXHTMLからそのまま生成できるぐらいだから、テキストから作成することは、あたりまえでなにも大したことがない。
作業に用いたソフトは「FUSEe」。サンプルとして選んだのは、日文研のサイトにて公開されている絵巻「田原藤太秀郷」。オンライン公開はいまだ画像のみで、文字情報が提供されていないため、文字テキストとしてアクセスできる電子ブックなら、それまた最小限の意味を持っているかもしれない。
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