学生たちはホームステイに出かけた。仕事の合間を縫って、さっそく観劇を楽しんだ。チケットが入手できたのは、「七人みさき」というもの。気持ちをワクワクして劇場に入った。500人程度の小劇場だが、座席は八割程度埋まり、雰囲気はとてもよかった。
たいへん真剣で真摯な舞台だった。ストーリ、音楽、人物造形など、ツッコミを入れようと思えば、それなりのリストにはなる。しかしながら、大いに堪能できた一側面はあった。宣伝チラシには、「戦国幻想絵巻」との謳い文句があった。いまごろ、絵巻という言葉のこのような使い方はいささか陳腐だと感じられるぐらい繰り返されている。たいていの場合、綺麗な、俗世間離れの場面が後から後から展開してくる、といったつもりで共有されている。しかしながら、俳優たちの、運動靴を履いての動き、無国籍、無時代の衣装、大道具はほとんどゼロという質素さ、どれを取り出してみても、そのような連想をさせてくれない。しかしながら、舞台の展開には、あっと言わせるものがあった。舞台上において、つぎのような演出が頻繁に用いられた。グループAの一群の会話の中に、グループBの人間は静かに入る。そこで後者の会話が始まり、それが経過しているうちに前者の人間がゆっくりと消えていく。すなわち同じ空間にともにいるはずもない人間の姿がともに存在し、会話の内容をもって関係ない人間は存在しないというステージの約束を巧みに創り出したものである。同じ空間での共存するはずのない人間や状況の同在は、まさに絵巻の定番であり、それをステージ上で目撃できて大いに満足した。
このように書いていても、演出方法の記述にはなるだろうが、理屈の説明の無気力を感じざるをえない。流れるような舞台の展開、それこそ理屈ぬき、説明なしに楽しめるものだった。インタメンとしては、そもそもそうあるべきだと言わなければならない。
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