日本、中国への四週間近くの旅行から無事戻ってきた。旅の間にアップロードできなかったエントリーをまとめて出して、関連の書類などを整理したりして、一日でも早く普段のリズムを取り戻そうとしている。
中国西安での旅は、招待側の親切な手配により、歴史古跡の観光も数多く叶えられた。西安といえば、中国に留まらず、世界の文明においてもトップに数えられるもので、歴史的な重みは、いたるところで感じ取れるものだった。紀元前の春秋時代や中国を統一させた秦、そして中華文明の頂点を謳う唐と、どれを取り上げてみても超一流のものだった。一方では、観光となればいずれも陵や墓に終始するのではないかと予想していたのだが、実際はまったくそうではなかった。
けっきょく、実際に墓室に入ったのは、一回のみだった。あの武則天の陵の近くに数多く点在する王子や王女、親近の大臣たちの墓はいまは三つほど発掘されて公開され、その中の永泰公主の墓だった。歴史上繰り返し盗掘されたもので、それでも世の中を驚かせる宝ものが出土された。その中の目玉の一つは、墓室の前に設けられたホールの壁に描かれた仕女の絵画だった。ほぼ等身大の美人の群れが生き生きとしていまでも飛び出しそうな姿を見せている。その中心に位置した女性は、一きわ目を惹く。体の曲線は流れるようなS字の形を成し、真っ赤な酒を入れられた夜光杯を両手で持ちあげる。膨よかな頬、優しい瞳、凛とした眉、言葉通りに美しい命を千年の時空を経て伝えてくれている。墓室の外に設けられた博物館には、この絵の複製に添えて長文の詩が捧げられ、「公主長眠宮女在、壁上着意塑粉黛」(葉浅予)と始まり、長眠した王女に伺候する仕女にしっかりとスポットを与えている。
墓室の中に立って絵を見つめていれば、周りにはガイドに連れられての観光客は跡を絶たない。ガイドたちはいずれも朗々と説明を続け、しかも同じ内容についてそれぞれ工夫を施して着眼を変えている。中の一人は、目の前の仕女が唐代第一の美人だという評判を下したという日本人の学者の実名を何気なくあげた。観光地のガイドたちの質の高いことに、西安の観光地全般において少なからずに驚き、感心した。
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