またまた東京にやってきた。今度は学会に参加するためのわずか数日の滞在であり、到着した夜にはすでに予定が入り、翌日からは、自分の発表も含める学会本番の連続だった。そこで、時差対策もかねて、朝の集まりが始まるまでにとにかく歩き回った。ホテルから会場までの距離は四キロ弱、コースを変えて歩いて会場に向かい、じっくり東京の街角の風景を眺めながらの散歩は、それ自体贅沢な休暇だった。
そのような中で、「聖徳記念絵画館」という名の建物が目に入った。堂々と絵画と名乗りながらも、これまで自分の知識にはまったく入らなかった。さらに言えば、ここに言う絵画からはあまりにも漠然とした意味合いしか読み取れず、中を覗くまでには、その性格も由来もまったく理解ができなかった。大正時代を代表する日本画の大家たちの作品が一堂に集まるという、なかなかユニークな空間であり、単純に表現の手段や、その効果を考えるにしても、他所では簡単に気づかない要素がいっぱい詰まっている。一方では、実際に豪華なホールを見てまわり、印象に残ったのは、むしろ馬の展示だった。あの伝説な馬のこともさることながら、見る人に視覚的な衝撃を与えたのは、なによりもその素朴で大胆な展示の仕方だった。馬を剥製にすると同時に、同じ馬の骨を取り出して、骨組みを組み立てて剥製と顔合わせに立たせた。ちょっぴり予想が付かず、実物でありながらも、現実の世界ではけっして実際に目撃することができない風景だった。
建物の外は、広々とした憩いの場だった。平日の午前という時間なのに、スポーツに打ち込む多数の集合の姿があった。重厚な歴史沈殿の面影をまるで薄めようとする意思が働いているかのように、一瞬感じ取った
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