2018年3月10日土曜日

マイクはどこだ!

水曜日には数ヶ月かけて準備してきた一つの行事があった。ふつうなら恙無く済んだと言いたいところだが、今度はしかしながら予想もしなかったハプニングがあった。繰り返し使っていた会議ホールには、大きなスピーカーがしっかり設置されてはいたが、なんとマイクが用意されていなかった。それも開始時刻になってはじめて気付かされた。そのあとの展開、関係者の神対応、まさに記憶に残るものとなった。

勤務校での所属学科が、この三年間ほど二回の合併が行われ、ようやくすべての外国語や言語学の部署を統一した「スクール」という到達に至った。行事とは、このスクールの設立行事、日本風に言えばキックオフの儀式だった。二百五十名を超えた来客に軽食やアルコールを含む飲み物を振る舞い、歓談を交わしたうえで、大学の総長が祝辞を述べ、知名の教授に一席の講演を披露してもらうというような大掛かりな内容だった。そのような中での、マイクなしの展開だった。その対応というのは、とにかく講演者に肉声でお願いするというものだった。来客たちはこれまた素晴らしい応対を見せて、静かに話に聞き入った。お陰さまで予定した四つのスピーチは、ほとんどすべて内容の変更がなく行われた。

頼もしい後日談が一つ付いた。その翌日、貴賓としてお越しになった一人の方と会話する機会があり、あらためてハプニングのことに触れたら、面白いコメントが戻ってきた。司会を務めた二人の若い学生こそ明らかに力不足だったが、あとのスピーチの四人は、それぞれじつにりっぱな声だった。教壇に立ち続けた経験が物を言わせるという職業の成せ技は、妙な形で気付かされたものだった。

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