2018年3月4日日曜日

王と妃と

先週の週末、楽しい集まりがあった。中国語を話す少人数の人々の集合に招かれ、何か古典についての話をするように頼まれた。友人関係なので気楽に応じた。ただ中国関係の話題をさほど持ち合わせていなくて、去年の秋、学生たちと一緒に読んだ長恨歌絵巻の話を改めて持ち出した。

長恨歌の詩は、言うまでもなくたいていの人々にそれぞれの形で馴染みをもつものである。一方では、詩の内容を丸ごと絵巻にするということは、決して多く行われず、新鮮なものとして皆さんの関心を集めた。異国の風景を表現するための太湖石、異国あるいは異界を象徴する四角の模様をもつ床、赤い色を施された室礼など、いちいち説明したら皆さんは一様に感心した趣きを見せた。その中の一場面についての議論は興味深かった。入浴を終えた美女の楊貴妃を王が振り返るというあの構図である。王と妃との位置関係はには不可解さ、ひいては一種の滑稽さが読めるのではないかと個人的な印象を語ったら、楽しい説明が戻ってきた。曰く、王と妃との間を動きまわる無数の美女は、もともと二人の目にも入らないような存在しかならない。その前提で、王その人もまさに同じく入浴をともにし、二人が熱愛に陥ったものだったのではなかろうか、と。もともと絵の読み方には正解などない。そこまで熱心で大胆な読み方を引き出せただけで、一席の話は成功だったと言えよう。

日本では様々な文化的な講座などが多く設けられるが、ここ地元では、子供たちを対象にする習い事や、健康志向のダンスクラブなどがあっても、文化的な集まりはなぜかかなり少ない。そのような中での一時、いささか思いに残る時間だった。

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