2018年3月24日土曜日

鯨鯢の姿

数ヶ月まえ、李白を載せて西の空へ去っていく鯨のことを記した(「昇天する李白」)。明の木版本に挿絵として描かれたもので、その当時の人々のある種の共通した認識を示したものだろうと漠然と推測したものに留まった。しかしながら、神々の姿を求めているうちに、それが遥か隋の時代の絵画にまで遡るものだと気づいて、少なからずに驚いた。

右に掲げたのは、「洛神賦図」(顧愷之、故宮博物院蔵宋模本)からの一コマである。中国絵巻のもっとも古く、極めて優れたものとして注目された作品であり、主人公の姿が繰り返し登場するなど、物語絵としての要素を過不足なく伝えている。そこで、この場面は、「洛神賦」のなかの「鯨鯢踊而夾轂」を描く。洛神の周辺を守る「文魚」、「六龍」、「水禽」とともに丁寧に絵画化され、鯨鯢(げいげい、クジラの雄と雌)は対となってしっかりと轂(こく、車のこしき)の両側に付いていく。木版に描かれた鯨と比較すれば、巨大な二本の須が見えない以外、ほとんどそっくりそのままの姿となり、丸く肥えた巨体は、なんとも微笑ましい。

故宮博物院所蔵の絵画資料は、おなじく高精細のデジタル画像で公開されていて、「洛神賦図」をはじめ、数千と数える一級品は、パソコンの前でクリックひとつでアクセスできる。なお、ブログ「琴詩書画巣」に収められた原作の賦との対応や日本語解説もあわせて付記しておきたい。

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