今学期の授業もちょうど折り返しにきた。去年に続き、今年も「TED@317」と名乗って、学生に3分間ビデオを中間レポートとして課した。去年の優秀作品が公開されていることもあって、創作にかける情熱や才能を大いに刺激し、数多くの傑作が提出された。
一方では、文字ではなく音声での作業ということで、ふだんあまり気づかれないことが表面化されたところも少なくなかった。その一つは、ローマ字表記の語彙、とりわけ人名や地名などの発音は、日本語の知識のない人にはけっして簡単ではないことだ。授業でまだ取り上げられていないテーマを本人が読書して集めた知識をもとにビデオを作成したので、突拍子もないエラーがこれでもかと飛び出してきた。図らずも文字の限界が示された。Edoのことを「イド」、Kamikazeを「カミカズ」、Kyogenを「キョウジェン」、これらはまだ一瞬考えたら理解できるものだが、極端な例となると、Mt. Hieのことを「ハイイ」、mono-no-awareを「モノノaware(発見)」と言われて、唖然というほかはなかった。もともと他民族の人々が一堂に集まるような教室なので、人の名前一つを取り出しても、スペイン、ドイツ、フランス、インドなど、とても正しく読めないという緊張は常に付き纏うものだ。しかしながら、日本語の場合、なんの変哲もない普通のローマ字だけに、余計に厄介だ。
もともと「イモジ」の実例に添えてローマ字の英語読みを考えたことがある(「emoji」)。解決方法が見つからず、まだまだ苦悩が続きそうだ。英語話者の人にはローマ字がけっして簡単に通じるものではないという事実にまず気づいておくべきだろう。記述の規則をすぐに変えることが無理でも、大事な語彙などについてなんらかの方法で注釈を加える工夫ぐらいは案出してほしい。
2018年10月20日土曜日
「イド」の苦悩
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