動画。字面通りなら「動く絵」、すなわち描かれた静止するはずの絵を動かしたもの、あるいは、動き出した絵、といったところだ。いうまでもなく、すこしずつ違う絵を、連続的に映し出すというあの仕組みを応用したもので、パソコンという便利な道具が出来上がるまでには、動き出されたものを実現しようと、プロたちがただせっせと絵を描いたものだった。ただし、妙なことに現代の言葉では、動いた絵というこの仕組みのものをわれわれはアニメと呼び、代わりに、動画とは、「YouTube」、「ニコニコ動画」などのサイトを賑わせているビデオ撮影したものを指すようになった。
現代のアニメの手法と古代の絵との出会いを目撃した一つの視覚経験を持っている。あれはあるアメリカ映画の出だしのところで、タイトルを忘れたが、たしか大掛かりなロードショーを伴うものだった。古代エジプトのピラミッドに描かれた影絵のようなものが動きだし、大きなスクリーン一面を古代の兵士たちが走り出し、戦場で死闘を繰り広げた。単純で幼稚な絵はそこまで魅力的になるものかと、不意を撃たれたような衝撃を受けて、身を乗り出して見ていたと覚えている。そのあと、たしかギリシアの絵も同じような処理を掛けられた映画があったりして、映画表現の一つの小さなパターンになったと見受けられる。
思いは自然と絵巻につながる。絵巻に描かれた絵は、似たような処理を掛けようと思えば、いとも簡単なはずだ。とりわけ絵巻の画面を眺めるために、紙に印刷されたものからパソコンのモニターにすこしずつ切り替え、マルチメディアの環境を取り入れることにより、切り取った時間枠において画像と音声とを組み合わせるようになれば、いたって自然にこのような作りにたどり着くに違いない。たとえばストーリの展開に添って人間の手足に動きを加え、背景の中で位置を変え、描きこまれた内容に出現や消失の順序を与えるなど、単純な操作を付け加えれば、まったく違う視覚の効果が得られる。いうまでもなく、これはすべて画面内容を適確に理解することを前提として、そのような動き自体は、絵の内容への一番明らかに説明を加えることになる。古代の絵巻を現代的な感覚に訴えるために、とっぴだが、愉快な愉しみかたになるのかもしれない。
以上のような試みは、すでにどこかで実現されているだろうか。わたしの知識にはないが、お気づきの方、ぜひ教えてください。なお、自作の絵巻朗読サイトには、いずれも「動画絵巻」と名乗って、あれこれとサンプルを試作してきたが、あるいはいつか「アニメ絵巻」といったものに挑戦しなければならない。
2008年6月29日日曜日
動画とアニメ
Labels: マルチメディア
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