2010年1月2日土曜日

百虎図

明けましておめでとうございます。

新しい一年が始まった。今年の干支は、寅年。日本で交わされた年賀には、寅という文字と虎の絵柄が横に並んで巷を賑わせていると想像する。一方では、中国では同じ干支を表現しても寅という文字を用いず、もっぱら虎年と称して、勇猛な虎の図案を配する。虎を含む目出度い言葉も膨大な数で思い出され、祝賀の口上に述べられている。

虎にまつわる絵と言えば、「百虎図」がまず思い出される。これを名乗る作品は無数にあって、いわば一つの作品のジャンル名の観を呈する。もともと「百」と言っても、百鳥、百牛、百花、ひいては百家、百科、百貨という言葉から察せられるように、必ずしも数字の百を意味するものではなく、百だと錯覚させてしまうぐらい大勢の、といったぐらいの意味合いである。虎の場合で言えば、それは百八頭の虎を描くものあれば、一頭しかないものあり、もちろん百頭と丁寧に描いたものもある。さらに、さかんに喜ばれる画題のわりには、権威をもつ基準作のようなものが存在せず、無数の絵師たちによって熱烈な愛好者の期待に応えつつ描かれ、伝われてきたが、一つの作品が無数の模作を生み出すといった中国絵画の常套がさほど認められない。

100102「百虎図」の作品群には、巻物の形態を取るものもある。ここには、日本の絵巻にまったくと言っていいほど見られない一つのスタイルがある。巻物のタイトルを巻頭に飾るものだ。日本の絵巻で言えば、最初の一段の詞書のスペースを丸ごと占拠するものだ。しかも文字を大きく書くということで、三つの文字を巻物の展開する方向に沿って右から左へ展開する。一部の古態の額などに見られるような文字の配列となる。

百の虎が一ヶ所に集まってしまうのは、実際的なものとしてちょっぴり想像しにくい。だが、絵に描かれたそれは、虚構的な風情が加わわり、なぜか目出度いものだ。

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