2018年1月1日月曜日

戌歳賀正

謹賀新年。

戌年を迎えた。雪が降り積もり、冬一番の寒さが続いている。「紅白歌合戦」を眺め、ゆっくりと流れる時間に身を任せている。

干支は変わり、思いはつい絵巻に馳せる。絵の中の犬、探し求めて改めて気づくが、たしかに人間の暮らしの中に早くから入ってきているが、昔はかなり様相が違っていた。餓鬼の仲間となる犬(「餓鬼草紙」)、琵琶法師に吠える犬(「慕帰絵詞」巻二第二段)、そして門のうちにはいるが、修行者を追物射する行動に飛び出そうとする犬(「男衾三郎絵詞」第二段)などなど、どれも今日の感覚からかなり離れたものばかりだった。犬同士がじゃれ合い、それが人間の慰めとなるような構図は、どうやら浮世絵の時代を待たなければならない。ただ、その中で特筆すべきなのは、やはり「十二類絵巻」に描かれたそれだろう。堂々たる風貌を誇り、着物姿で歌の席に正座する。とりわけ国文研蔵の模写がいい。元の絵をそっくり再現することに過剰に気を遣うことはなく、むしろ描く人の思いが込められた、清々しい。

それにしても、動物たちを主人公に据え、和歌だったり、合戦だったりの場に引き連れ出さなければならない理由、それを実現するための情熱は、どこから来たのだろうか。秋ごろに予定されているシンポジウムに向けて、課題の一つとしたい。

鳥獣絵卷」(国文学研究資料館蔵)

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