地図は日常生活の中で欠かせない。どのような年齢段にせよ、ほとんどの人々は、地図のあり方、それとの関わり方の変化を体験し、実感しているに違いない。歴史的に、文化的に地図を眺め、たとえば「概念図」で個人的な思いを書き留めていた。今週の読書の中で目に飛び込んできたチベットの最古の地図は、そのような認識にさらに興味深い実例を加えた。
この地図は、ふつう「鎮魔図」と呼ばれている。かなりの数の模写や複製、そしてこれにまつわる伝説が残っている。オリジナルものは七世紀かそれよりさらに遡ると信じられている。チベットの人間によるチベットの地図である。ここに「魔」とされているのは、鬼妖怪ではなく、豊満な女性である。活気漲る女性が横たわり、その上に、チベットの由緒正しい寺院が配置される。それらは、心臓の位置に置かれる大昭寺をはじめ、肩や足(「鎮肢」)、関節(「鎮節」)、掌や脚(「鎮翼」)に配置される十二の寺院が、ほぼ地理状況を正確に伝えながら描かれている。ここには、宗教信仰の言説は鮮明に打ち出されている。チベットの大地は、美しい女性であって、魔女だと見なされる。それに対して大小数々の寺院は体に打ち込んだ釘のようにその魔力を閉ざし、降伏させることに成功した。概念となる地図は、ここに一つの極致の様相を見せている。
この「鎮魔図」は、さまざまな文脈で語られている。ごく最近では、まるごと現代風に描き変えられ、美術展に出品されたと報じられる。地図としての構想や構図は、悠長な年輪のわりには、はなはだ想像を刺激し、妙な生命力を感じさせていることだけは確かなようだ。
唯色:镇魔图
2018年9月1日土曜日
女体地図
Labels: 内と外・過去と現在
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