先週週末のシンポジウムの一コマである。初日の発表がすべて済んだところ、夜にもう一つのハイライトが用意された。大学キャンパスの中にある立派な劇場にはかなりの観客が集まり、ステージには日本語による「狂言」との看板が立ち、正面には紙に描いた松の木が飾られた。日本語や日本の古典芸能についての予備知識の共有がとても期待できない中、どのような展開になるのやらと、はらはらして開演を待ったが、なんと英語によるものだった。そして、丁寧に芸能の約束を守った狂言も、あっという間に観客の心を掴み、まったく違和感なく展開し、人々を魅了した。
とりわけ印象に残ったのは、なによりも若い者たちのいきいきとした熱演だった。妖怪カニがエネルギーいっぱいに暴れ廻り、凶悪そうな雷神がとことんコケにされ、人形を模したお七が妖艶に舞う。演者の一人ひとりは、役に嵌り、実に自信をもって堂々と立ち振る舞った。いうまでもなく、それらをすべて司ったのは、一座の師としてのどっしりした存在を見せたコミンズ教授である。狂言のシテ、舞踊の地謡、浄瑠璃の太夫と、四面八臂の活躍を披露し、しかもすべての上演に使われたのは、自らが手がけたオリジナル英訳だと知って、観客から感嘆の声が絶えなかった。
舞台が始まるにあたり、主催者はわざわざ写真撮影の許可を知らせた。それを良いことにして、観客席の真ん中に座り、カメラを両手で構えた。観劇と撮影との両方をともに楽しむ、なんとも贅沢な二時間だった。
2018年9月29日土曜日
英語狂言
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